この河は生命を湛える 〜四万十逍遙 源流から河口へ〜
飯島 俊成


鏡野吹奏楽団創立25周年委嘱作品。


2002年2月、高知県各地を一人で回りました。

鏡野吹奏楽団の本拠である高知県中央近くの土佐山田から

四万十流域への取材旅行でした。

中流の窪川、上流の東津野と大野見、

また中流の土佐大正や土佐昭和、河口近くに位置する中村、

さらには四万十の水が太平洋と水と溶け合う土佐清水、足摺岬。

源流の津野から、大野見、窪川、土佐大正、土佐昭和、中村へと、

四万十は流れの中に、周辺に生命を育みながら流れる河です。

海面から蒸発した水蒸気が雲となり雨となり山に注ぎ、

多くの生き物を育む流れとなって、また海に還る。

自然に手を加えることなく、人間が自然に寄り添って生きてきた、

だから四万十は生命に溢れているんだ、そう実感できた瞬間でした。


曲は源流の静けさの中から始まります。

そして上流に位置する大野見の雨の風景へ、

次第に周囲の流れを集めた河はゆったりと流れ中流へ、

そして大河となり明るい光りに満ちた太平洋に注ぐ

そんな情景を思い浮かべながら、演奏し、また聴いて頂けるなら幸いです。

タイトルの「生命」には、当然、自然と共生する「人間」も含まれます。

「風の詩」「椎葉幻影」「波に抱かれて」等と同じように、

この曲も、自然と、そしてそこに棲む人間を含めた「生命」への賛歌です。


※全曲を通じるテーマは、大野見村の田植歌を使っています。とても素敵な歌、心に滲みる歌です。