「母なる海」と呼ぶように、海は新しい生命を宿す。
だが、夜の海は底知れぬ恐ろしさも感じさせる。
満天の星々が弧を描いて海に沈んでゆく様は、《海が星を釣っている》ようにも見える。
人は死して星になると、古来より洋の東西を問わず考えられている。
すると、海は中有にある魂を呑み、新たなる生命を再生しているのではないだろうか。
生命の川と呼ばれる四万十川の注ぐ高知の荒海は、特に雄大に星々を釣る。
海の抱く波が寄せては返す様は、人の呼吸によく似ている。
そして、一つの大きな波の内には、様々な小さな波が幾つも含まれている。
一つの波の内に、どれだけ多くの呼吸が浮き沈みしていることか。
人は人に呑まれ星となり、星は海に呑まれ新たな生命となる。
決して美しいだけでは済まされない、生命の連鎖。
鏡野吹奏楽団の委嘱作は、四万十川を描いた第一弾に始まり、
大宇の光を描いた第五弾へと至り一つの豊穣な海となりました。
そこに連なる作品を書かせて頂けたことに、深く感謝致します。